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椎尾薬師

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 椎尾山薬王院(しいおさんやくおういん)。天台宗の寺。茨城県桜川市の椎尾山中腹にある。 三重の塔が美しい落ち着いた風情のある寺。また、筑波山登山の薬王院コースの起点ともなっている。 関東九十一薬師霊場第72番札所、関東百八地蔵尊霊場第62番札所、茨城百八地蔵尊霊場第86番札所。
 開山は徳一と伝えられ法相宗の寺として創建された。 筑波山中禅寺の守護として四方に建立された筑波山四面薬師如来のひとつ。 創建間もなくの782(延暦元)年、天台宗の開祖・最澄の高弟である最仙上人によって、桓武天皇の勅願所として天台宗に改められた。 824(天長2)年には、慈覚大師により再興され談議所となった。鎌倉時代の1252(建長4)年、忍性が中興し律宗となったが、 1351(観応2)年、天台宗に戻っている。
 なお最仙上人は、現在の筑西市関本中の茶花家に生まれ、仏教の僧となってから唐に留学し茶の種を持ち帰ったとされる。 故郷関本の実家で茶の栽培を始めた。この実家の茶花家で収穫された初茶は薬王院の本尊薬師如来に献上される献茶の儀式が昭和初期まで行われていた。 茶花性はこのことにより生まれたものという。
 本尊の薬師瑠璃光如来像は鎌倉時代の作と伝えられ、毎年4月8日の花まつりに合わせ1週間のみ御開帳される秘仏。 像高50cm、金銅座像仏。三重塔と共に茨城県指定文化財。 本堂及び仁王門、そして寺が所蔵する木像因達羅大将立像(伝巳神)、小金銅仏像、算額は桜川市指定文化財。
 仁王門の金剛力士像(仁王像)は、老朽化したことから2011(平成23)年から2019(令和元)年にかけて修復が行われ、 新たにその特徴などから、鎌倉時代の13世紀ごろの作で、慶派の仏師によるものである可能性が高まった。 これまでは火災によって焼失し、仁王門再建と同じ時期、江戸時代初期の作と考えられていた。 金剛力士像は阿形像が高さ約2m90cm、吽形像が高さ約2m85cm。1本の木から彫り出しそれを縦割りし内側をくりぬいて接合する 「一木割矧(いちぼくわりはぎ)」という技法で作られている。これは鎌倉時代における流行の作り方といい、 奈良の興福寺食堂や京都の三十三間堂の金剛力士像と酷似しているという。なお金剛力士像は、現在阿弥陀堂に安置されている。
 かつては檀林として44坊あり、多くの修行僧がいたが、1550(天文19)年の山火事により諸堂と寺宝を焼失。 本尊は池に投げ込まれかろうじて難を逃れたとされる。また金剛力士像も鎌倉時代の作の可能性が高いことから火災から救出されたと見られる。 現在の諸堂は江戸時代以降の再建。本堂は1680(延宝8)年、三重塔は1704(元禄17)年の建立。
 病気平癒、眼病平癒、厄除けなどに御利益がありとされる。鎌倉時代に椎尾城主が男子誕生を祈願したところ、無事男の子が生まれた。 このことから子授けの祈願で訪れる人も多い。
 境内にある古木のスダジイは、推定樹齢500年。 境内を中心としたスダジイの群生は、椎尾山薬王院の樹叢として茨城県指定天然記念物になっている。

三重塔
 釈迦三尊が安置されている。心柱の墨書から1704(元禄17)年の落慶。塔の高さは約25mで同寺院のシンボルとなっている。 大工棟梁の桜井瀬左衛門安信は、この塔を建てた7年後、成田山新勝寺の三重塔を建立している。茨城県指定文化財。
三重塔 三重塔正面
三重塔(左)、三重塔入口(右)

本堂
 瑠璃殿。江戸時代初期の1680(延宝8)年の再建。当時の学頭、本孝法印による長年の布教勧進が実り建立された。 大工棟梁は桜井瀬兵衛。三重塔を建てた桜井瀬左衛門安信は息子。
 内陣と外陣を分ける密教建築の典型的な作例という。 内陣には本尊薬師如来、日光菩薩、月光菩薩、十二神将、最仙上人像などを安置する。 桜川市指定文化財。
本堂
本堂、正面から

仁王門
 1688(貞享5・元禄元)年の建立。交通安全などを祈念して奉納された大きな草履と下駄が門の脇にかけられている。 桜川市指定文化財。修復が行われていた金剛力士像は、現在は阿弥陀堂に安置されいる。
仁王門
仁王門
仁王門草履下駄奉納左 仁王門草履下駄奉納右
交通安全などを願い奉納されている巨大な草履と下駄。仁王門左側(左)、同じく右側(右)
仁王門
仁王門、参道途中から

阿弥陀堂
 阿弥陀如来を本尊とする。近年建立されたもの。
阿弥陀堂
阿弥陀堂

毘沙門堂
 三重塔脇にある。江戸時代までは山王社という神社だった。
毘沙門堂
毘沙門堂

スダジイ
 三重塔脇と仁王門手前に大きなスダジイがある。
三重塔スダジイ 三重塔スダジイ幹
三重塔脇のスダジイ(左)、幹(右)
仁王門スダジイ
仁王門手前のスダジイ

椎ノ木様
 阿弥陀堂と仁王門の間にある。巨大なこぶがある椎の木の巨樹。 その存在感から「椎ノ木様」と尊称される。近年、毎年愛称がつけられるようになった。 2018(平成30)年度は「椎合樹(しあわせのき)」さま、2019(令和元)年度は「てんぐのこしかけ」さま、 2020(令和2)年度「雄鹿ノ椎」さま、2021(令和3)年度「龍尾ノ椎」さま、 2022(令和4)年度「福来椎」さま。なお愛称は公募され、毎年11月ごろ行われている。
椎ノ木様 椎ノ木様こぶ
椎ノ木様(左)、巨大なこぶ(右)

参道
 参道入口は西側の阿弥陀堂側入口と正面である仁王門側入口の2カ所。 仁王門から入ると歴史を感じる急な階段を登り本堂前に出る。 阿弥陀堂側から入ると阿弥陀堂前まで階段、その後は急ではあるがスロープとなっている。
参道入口 参道入口西
正面入口でもある仁王門前入口(左)、西側にある阿弥陀堂前入口(右)
参道階段
仁王門から本堂前に至る階段

燈籠
 仁王門前にある燈籠。
燈籠左 燈籠右
仁王門前燈籠向かって左側(左)、同じく右側(右)

手水舎
 本堂手前にある。
手水舎
手水舎
水盤 龍口
手水舎水盤(左)、同じく龍口(右)

鐘楼
 本堂前にある。梵鐘は約1トンあり、桜川市真壁町の小田部鋳造で造られたもの。
梵鐘 鐘楼
梵鐘(左)、鐘楼(右)

弁財天
 本堂の向かって右手にある。弁天池のなかに祀られている。
弁財天
弁財天

弁天池
 本堂に向かって右手にある池。真壁のひなまつりの時期には舟遊びをするお雛様が飾られ人気を集めている。
弁天池
弁天池

延命地蔵尊
 石仏立像。鎌倉時代の建立という。
延命地蔵尊
延命地蔵尊

水子地蔵尊
 授与所前にある。
水子地蔵尊
水子地蔵尊

授与所
 阿弥陀堂側からのスロープ途中にある。御朱印などの授与はこちら。
授与所
授与所

ふどう水
 阿弥陀堂脇にある。
ふどう水
ふどう水

庫裡
 阿弥陀堂脇にある。
庫裡
庫裡

椎尾山
 椎尾山は、筑波山の西北西にある山。標高は256m。筑波山から伸びる西側斜面のピークのひとつ。
椎尾山
本堂前から見た椎尾山

スダジイ樹叢
 境内と裏山2.6haに自生するスダジイ(椎)の樹叢。 推定樹齢300〜500年の大木も多く、群生の規模が非常に広大であることが特色。 またスダジイは、主に海岸に自生する温暖な気候を好む常緑広葉樹。 かつて地球が温暖な時期で海水面が上昇した時に海岸付近に形成されたと考えられている。 その後も枯れずに生育しているのは、筑波山中腹で冬に起こる特異な気象「斜面温暖帯」による暖かさがあってと見られている。 茨城県指定天然記念物。
スダジイ樹叢
スダジイ樹叢

水無月飾り
 弁天池に小さな舟を浮かべて雛人形が飾られる。また季節の花である紫陽花が彩りを加えている。 水無月(6月)限定。時間は午前9時から午後4時。雨天日は行わない。
水無月飾り
水無月飾り

紅葉
 秋には境内の樹木の多くが紅葉し、赤や黄色の美しい姿を見せる。 紅葉の見頃は12月に入ってからで、筑波山西側の斜面温暖帯の影響もあって平地より暖かいこともあり、 筑波山周辺では平地の後になり最も遅い。
紅葉 紅葉池
境内の紅葉(左)、弁天池周辺の紅葉(右)

御朱印
 本尊薬師如来の御朱印のほか、時期によっては限定御朱印がある。 御朱印受付は授与所、閉まっている場合は庫裡へ。
御朱印
御朱印

アクセス
 茨城県桜川市真壁町椎尾3178。椎尾薬師の地図
 【車】 北関東自動車道、桜川・筑西インターチェンジから約30分。
薬王院参道入口
つくし湖近くの薬王院の参道入口。この道を入ると九十九折の道になる
 【駐車場】 参拝者無料駐車場が寺前の道路を挟んで反対側に複数個所ある。
 【公共交通機関】 JR水戸線岩瀬駅からタクシー約18km。 ないし岩瀬駅から地域コミュニティバス、「つくし湖入口」バス停ないし「旧酒寄駅跡」バス停から徒歩。 つくし湖入口バス停から約2.5km、旧酒寄駅跡からは約2km。 いずれのバス停からも寺院が椎尾山の中腹にあるためかなりの坂道を歩くことになる。
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